研究内容
認知・知覚に基づくインタラクションデザイン
人の行動変容や発想転換を支援するためのやインタラクションやユーザーインタフェース(UI)のデザインに関する技術を研究しています。システムを使った時の作業成績や認知的負荷、記憶、眼球運動等、人に関わる様々な指標を客観データまたは主観データとして計測し、それらをインタラクションやUIのデザインに応用することを目指しています。
レジリエンス能力を向上させるインタラクションデザイン
航空、鉄道、医療、原子力プラント等社会インフラを支える社会技術システムでは、ヒューマンエラーを可能な限り抑制することでサービスの安全を実現することを目指してきました(Safety-I)。しかしシステムや環境が複雑化し常に変化する近年では、作業者がこれまでに経験したことのない未知の事象が発生することが増えてきました。既知の事故分析に基づくこれまでの安全管理の方法だけでは、これら予期せぬ事象が発生した場合に対応することができません。そこで注目されているのが人のレジリエンス能力に基づく方法です(Safety-II)。レジリエンス能力とは人の柔軟な対応能力のことです。未知の事象に遭遇した際、人はレジリエンス能力を発揮し自律的かつ適応的に対処することで、失敗や最悪の事態を回避することができます。レジリエンス能力は人のポジティブな能力としてヒューマンエラーとの対比で語られます。
当研究室では、航空管制や医療分野での業務を題材に、人のレジリエンス能力を向上させるためのインタラクションデザインの研究に取り組んでいます。何らかの指針に基づき設計されたユーザインタフェースは、人のレジリエンス能力、ポジティブな能力を引き出し強化することができるのではないか、という仮説を実験的に検証しています。特に最近では、業務の専門的知識や内容に依存しない汎用的なレジリエンス能力の抽出手法を研究しています。航空管制業務の認知的特徴を汎化した実験課題を設定し、そこにレジリエンス能力を発揮しやすいシナリオを埋め込み、参加者の作業パフォーマンスや眼球運動、思考プロセスや戦略を測定・分析することでレジリエントな行動の特性を抽出します。そしてそれら行動を促進・強化するようなインタラクションをデザインしていきます。
誘目度モデル構築とUI設計への応用
GUI画面の目立ちやすさを数値化した誘目度モデルを開発しそれをUIデザインに応用する研究を行っています。従来から画像処理分野で開発されてきた、絵や写真の誘目度領域を抽出するモデルを拡張し、GUI画面の特徴に特化した誘目度モデルを開発しています。本研究では、GUI画面でオブジェクト(UI部品やアイコン等)の目立ちやすさに有意に影響するデザイン要素は、色とサイズ、レイアウトであることを明らかにしました。そして認知心理実験によってこれらの影響を計測し数値モデル化しました。さらに、このモデルを使って航空管制のレーダー画面の配色設計を行い、色による目立ちやすさの違いが作業者のパフォーマンスに影響を与えること、本モデルによる設計が作業者のパフォーマンス向上や認知的負荷の低減に有効であることを実証しました。